県内事業者のDX推進をさまざまな取り組みでサポート

福井県坂井市にある「ふくいDXオープンラボ」は、公益財団法人ふくい産業支援センターが運営する、県内中小事業者のDXを推進するための拠点施設です。今回は運営スタッフとして活躍する太刀内寛人さんにお話しをお伺いしました。

太刀内寛人さん

ふくいDXオープンラボ

まず、ふくいDXオープンラボについて教えてください。

太刀内さん福井県は人口の減少や高齢化、持続的な地域経済の確立といった課題、さらに北陸新幹線の延伸、港湾における物流のハブ機能の確立など、県のこれからも踏まえ、デジタル技術を積極的に活用し、仕事や暮らしの生産性を高め、より魅力的で豊かなものへと変革していくDXに力を入れています。「生活のDX」「産業のDX」「行政のDX」の3本柱で取り組むなか、「産業のDX」を推進する施設として、ふくいDXオープンラボは2021年6月にスタートしました。

具体的にはどんなことに取り組んでいるのでしょうか?

太刀内さんまずひとつが、県内の中小事業者や個人事業者の相談窓口です。「DXと言っても、何から手をつければいいのかわからない」という事業者がほとんどですので、事業者がDXでどんな課題を解決したいのかを聞くことがファーストステップです。そこから、事業者のもとへITコーディネーターの資格を持つ専門家を派遣する「DX専門家派遣」や、現場で具体的なアドバイスをしたり、よりDXを深く進める時には「伴走型DX推進プロジェクト」でシステム導入や人材育成をサポートしたり、最近ではDX推進を希望する事業者と県内IT企業をつなぐマッチングの仕組みづくりにも力を入れています。

勉強会や研究会も行っていますね。

太刀内さんDXは資料だけを見ても、なかなか理解できません。勉強会は、たとえば「生成AI」をテーマにして、生成AIとは何か、どう活用するのか…などをわかりやすく学ぶ場です。研究会はもっと実践的なもので、同じメンバーでの複数回のグループワークなどを通して、実際のビジネスで使える知識やスキルを身につけてもらうものです。どちらにもたくさんの事業者に参加してもらっています。

福井県はDXへの気運が高いように思います。

太刀内さん県内に多い製造業やサービス業を中心に、年間200件以上の相談があります。「ふくいDX加速化補助金」制度もあって、取り組んでみようと思った事業者が多いですし、今はまだDXが進んでいなくても、DXに積極的な姿勢を見せる事業者も認定する「ふくいDX推進宣言企業」の登録制度も整備しています。福井県は全国的に見ても、事業者のDX化の支援が進んでいる地域です。他の自治体や企業も、見学や視察でふくいDXオープンラボを度々訪れています。

人とデジタル技術の共存が、事業の課題解決と発展につながる

実際のDXの事例を教えてください。

太刀内さんこれまでのDX事例を紹介している「ふくいDX事例集サイト」があります。ぜひ一度ご覧いただきたいのですが、ここから2つのVR(仮想現実空間)を活用した事例をピックアップさせてください。

ひとつは結婚式場です。これまで下見をしようと思っても、週末は披露宴で式場が見学できないことが多く、見学時間を確保することが悩みのタネとなっていました。そこで、結婚式場を仮想空間(バーチャル)で見ることができるシステムを構築。VRゴーグルで会場全体の雰囲気をリアルに確認できるほか、何種類もある装花やテーブルクロスのデータを瞬時に入れ替えることができ、顧客が思い描く披露宴のイメージにより近づけられるようになりました。

ふくいDXオープンラボには、このバーチャル結婚式場を体験できるVRゴーグルが置いてありますね。

太刀内さんVRは実際の装置で体感しないと、そのポテンシャルが伝わりません。ラボでは実際に来ていただいた方にVR体験も提供しています。

さらに、もうひとつのVR事例は?

太刀内さん警備会社による交通誘導の事例です。警備業における交通誘導は法律による規定の研修が定められていますが、現場での研修は危険も伴います。そこで、視覚はもちろん、交通誘導警備の動作動きまで判定する、専用アプリと市販のVRゴーグルを組み合わせた研修システムを構築。実際に法定研修の一部になるもので、警備業界内でも画期的なシステムです。今はこの教材の販売も新事業として手がけるなど、まさにDXによるビジネスの変革が生まれた事例です。

どちらの事例も、課題をデジタル技術で解決して、さらに競争力や事業性を高めていますよね。

太刀内さんVRは特にわかりやすいですが、デジタル技術が可能にすることを活用して、課題解決に導くのがポイントだと思います。人が得意とする仕事や人でないとできない仕事と、デジタル技術でカバーできる仕事をうまく共存させることが大切ではないでしょうか。デジタル技術を導入することで、効率が上がり、「仕事が早く終わるようになった」「従業員のワークライフバランスが取れるようになった」といった事業者の声も挙がっています。

どこで、どう働くかを自由に選べる世の中に

DXというと、どうしても“とっつきにくさ”があります。

太刀内さん確かに県内の事業者、特に経営者の方々は高年齢化が進んでいることもあり、よくわからないと思われがちです。でも、手を出さないでいると、次々と新しいデジタル技術が開発されますので、苦手意識がさらに高まってしまう“負のスパイラル”に陥りがちです。最近は生成AIが話題になりましたが、今後はデジタル技術がもっと身近な場所にも広がっていくはずです。DXに成功する事業者の多くは、失敗してもいいから、まずはやってみようという気持ちを持っています。DXに興味を持つこと、そして恐れずチャレンジすることが、最初の一歩だと思います。

太刀内さんは、DXによってどんな未来が待っていると思いますか?

太刀内さんひとつは働き方の変化です。先ほど述べた通り、デジタルに任せた方がいい仕事と人がすべき仕事の線引きが明確になってきたこともあり、働く時間はもちろん、場所も問わない働き方ができる時代です。福井県は苦労することで仕事を覚える…といった考え方がまだまだ根強いですが、定時で帰れるような働き方でも、デジタル技術を活用することで、生産性の高い仕事ができ、知識やスキルもしっかりと身につけられるはずです。

都市と地方といった考え方もなくなるのでは?

太刀内さん今は大都市と地方の格差はまだまだありますが、やがて差は小さくなるかもしれません。福井県は全47都道府県幸福度ランキングで5回連続全国総合一位ですが、子育て世代の方が福井県に住みながら働くなど、DXが少子高齢化の課題解決の道になる可能性も。人がどこで、どう働くかを、自由に選べる世の中が来るかもしれないですね。

最後に、DXへの期待を聞かせてください。

太刀内さん事業者の多くは人手不足や人材育成、売上減少といった課題を抱えていますが、この課題を解決するためのデジタル技術はより便利で使いやすいものへと日々進化しています。これを活用しない手はありません。今や仕事だけではなく、暮らしの中でのDXも進み、DXへの対応は避けられません。だからこそ、デジタル技術とうまく付き合っていきたいですよね。私もそうでしたが、一度デジタル技術にふれてみると、興味が湧いて、自分から調べるようになりました。そんなデジタル技術との共存に向けた一歩を踏み出せば、きっと想像以上の豊かな未来が待っていると思います。

ふくいDXオープンラボ
https://www.fukui-dxlab.com

ふくいDX事例集サイト
https://dxfukui.jp/case/

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