耐震性やデザイン性なども備えた住宅を低コストで実現

これまでの家づくりとはコストも、工法も、まったく異なる3Dプリンター住宅を手がけているのは、兵庫県に本社を構えるセレンディクスです。今回はCEOの小間裕康さんに、3Dプリンター住宅と、その先にある未来について、お話しをお伺いしました。

2023年に発表した1LDK・50㎡の平屋建「serendix50」。価格550万円です。しかも施工時間は44時間30分!

小間さんこれは3Dプリンターを使うからこそ、実現できたことです。ロボットアームの先端に取り付けたノズルから特殊なコンクリートを出力し、パーツを作ります。これを現地に輸送し、組み合わせて完成させます。私たちのモノづくりは、3Dプリンターメーカーをはじめ、自動車製造などで活躍するロボットアームメーカーなど、世界200社以上の協力会社とのコンソーシアム体制。世界最先端の3Dデジタルデータと、3Dプリンターなどのツールの活用ノウハウを強みとする当社は、3Dプリンター住宅の開発・販売などを行っています。

コンクリート住宅と言えば、冷たい家みたいなイメージもありますが…?

小間さん実はコンクリートの内部に断熱材を入れた二重構造になっていて、しっかりと断熱性を備えています。これまでのコンクリート住宅は型枠に流し込んで固める工法が主流のため、複雑なものは作れませんでしたが、3Dプリンターだからこそできます。また、コンクリートは素材そのものが堅牢であり、しかも3Dプリンターでは強度に優れた複雑な構造も可能です。私は神戸市出身で震災も経験していますが、地震大国の日本だからこそ、耐震性を第一に考え、安心・安全な家であること、なおかつ断熱性なども備えた、快適に暮らせる家を目指しています。

スタイリッシュなデザインも印象的です。

小間さん
一昨年に販売した球体デザインの「serendix10」のように、独特な設計が可能です。身近なところでは、お掃除ロボットをどこに収納するかなど、IoT機器との連動やシナジーも視野に入れた設計も検討しています。オフグリット*1の地域をつなぐデジタル・ヴィレッジ構想*2との親和性も高く、たとえば田舎でぽつんと家を建てて暮らす…といった場合も、十分に対応できる家を作ることができます。将来的には住宅以外の施設も手がけたいと考えています。

*1オフグリット:送電網に繋がっていない状態、あるいは電力会社に頼らず電力を自給自足している状態
*2デジタル・ヴィレッジ構想:小〜中規模の地域をIoTなどのデジタル技術で結び、地域課題の解決につなげるDXの一つ

変革をもたらす3Dプリンター住宅への問い合わせはすでに1万件以上!

これだけメリットが多いと、問い合わせも多いでしょうね。

小間さん2024年初頭の段階ですでに1万件以上の問い合わせがあり、そのうち購入意向のあったのは2,000件以上もあります。当社の3Dプリンター住宅事業は日本初の試みでもあり、多くのお客様から励ましの声もいただいています。特に60歳代のお客様からの問い合わせが多いです。定年退職後にマイホームを夫婦二人暮らし用に改築したくても、今の住宅事情では資金も大変ですから、そんなお客様の期待に応えたいと思っています。

実際に3Dプリンター住宅の供給はスタートしているのでしょうか?

小間さん現段階で「serendix50」は夏までに6棟の建設を予定しています。これが無事に終われば、2025年からは数百棟単位での量産出荷を目指します。

3Dプリンター住宅が各地で見ることができるのは、もうすぐなんですね。その一方で課題はあるのでしょうか?

小間さんこれまでにない建材や特殊な工法で作っていますので、まだまだコストは高いと感じています。例えば、現在は現行の建築基準法に則って建てていますが、3Dプリンターで使用する素材は、法律上、建築材料として認められておらず、鉄筋や鉄骨が必要になっています。今後は鉄筋・鉄骨レスでも建てられるよう、建築基準法の特例を大臣認定で取得し、さらにコストダウンを図りたいと考えています。後は、製品化はもちろん、実際に供給が始まってからのスピード感ですね。初めての試みだからこそ課題も次々と出てきますが、お客様の期待に応えるためにも、一つずつクリアしていきたいと思っています。

ちなみに、なぜ小間さんは3Dプリンター住宅事業に取り組んでいるのでしょうか?

小間さん私はこれまで人材派遣会社やベンチャーファンドなど、さまざまな会社を起業してきました。2010年には先端技術を駆使したEV(電気自動車)スポーツカー事業のスタートアップにもたずさわりましたが、そこで自動車のモノづくりを見て、燃料がガソリンから電気になるように、ここ100年変わっていない住宅分野にも変革を起こせるのではないかと考え、2018年にセレンディクスを立ち上げました。これまでの事業経験は、今の200社以上のコンソーシアム体制の礎にもなっています。現在はEVトラックの分野にも参入しており、ゆくゆくは3Dプリンター住宅のパーツをEVトラックで運ぶような構想も描いています。

ゆとりのある暮らしと、自由な生き方ができる未来を

では、3Dプリンター住宅によってどんな未来を描けるとお考えでしょうか?

小間さん今の住宅はローンを組んで買って、長い人は35年、場合によって定年退職後も払い続けます。収入の多くを住宅費に割く必要があるため、ある意味、したいことができないような、ローンに縛られた暮らしになりますよね。しかし、3Dプリンター住宅によって住宅費の低コスト化が実現すると、自由に使えるお金が増えます。お金の使い方はもちろん、地方であっても自分が住みたい土地に住んで、テレワークで仕事ができるなど、働き方も変わってきます。そんな金銭的にも、精神的にも、“ゆとりのある暮らし”ができることこそ、3Dプリンター住宅の一番のメリットではないかと考えています。

すると、家は一生に一度の買い物ではなくなる?

小間さんそうですね。車を買い替えるように家を買い替えたり、年齢や家族構成、仕事に合わせて自由に家を買い替えたりするような、もっと自由な生き方ができるようになると思います。それが当社の目指す未来の暮らしです。それは決して想像できないような未来の話ではありません。今後は高品質&低コストに向けたさらなる技術開発に取り組むことはもちろん、家族で住める広さの住宅も開発するなど、ラインナップを増やしながら、当社が思い描く未来の暮らしを実現していきます。

セレンディクス株式会社CEO 小間裕康さん

セレンディクス株式会社
https://serendix.com/

ピックアップ記事